《断》コース
街に取材して創る演劇「ポタライブ」の吉祥寺編《断》(ことわり、2005)のコースをたどりながら、作者の岸井さんがその再現を交えて、上演当時と様変わりした街の模様も含めて解説する。ゲストの木室陽一さんは、4人の出演者のうちの一人だった。
主な舞台は駅周辺の商店街の地帯である。出演者は、案内役に着いて散歩しながら鑑賞する観客のコース上の複数のポイントに現われていたそうだ。出演者それぞれに役柄が担われていて、その設定に基づいたアクションが演じられたという。
この「プロジェクトアートへの道」に参加して複雑な感触に捕らわれた。
駅周辺の商店街の開発計画とその推移や挫折をエピソードに進むこの劇で、その痕跡を街の随所のかたちが物語ることになる。
舞台=街に基づいて、ときには象徴的な出演者の役柄として被せられたフィクションが演じられる環境もまた当の街であるために、そのフィクションが、街に潜在する思念のようなものを存在せしめるような感覚が訪れる。街が語りだすのだ。
けれども、語りだす前にも街はあった、ように思われた。そして街は劇が終わった後も続いていく。
この語りだした街と、続いていく街との間の溝、捉え損ねあるいは捉え過ぎの解消し難さに気づいてしまったときに生じるのが、おそらく複雑な感触なのだ。
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投稿者:印牧